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刹那と永遠 - Moment and eternity -

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・東京1~「ダム・ウェイター」観劇の旅~

  ★☆「ダム・ウェイター」観劇の旅@東京(5月27日~28日)☆★


<はじめに>

「ダム・ウェイター」という芝居を観に東京へ行ってきました。
TVや映画で活躍中の俳優、堤真一さんと村上淳さんの二人芝居です。
今までも何度か舞台や演劇を観たことはありますが、二人だけの舞台というのは
初めてです。内容もなんだか難しそうだし・・・理解できるかしら?

不安と期待を胸に、新幹線に乗り込みました。



【5月27日(木)】


<「殿、ご臨終の地」に迷い込む@「1/47」>

午前10時頃に東京駅に到着しました。
ますは本日のお宿、駅の構内にある「東京ステーションホテル」に荷物を預けます。
天井の高い吹き抜けのロビーには深紅の絨毯が敷かれ、豪華なシャンデリアが吊るされています。上品で歴史の重みを感じさせる、その貴婦人のようなエントランスにうっとりしました。フロントには外国人が大勢おり、フロントの女性が英語でスマートに対応しています。

ステーションH3
★エントランスホール。深紅のカーテンと絨毯がクラシカル。

京浜東北線に乗り、新橋で下車しました。
新橋駅の前では「古本祭り」が開催されていました。
炎天下の下、ずらりと古本が並べられています。汗を拭きながら本に見入るサラリーマンの姿もちらほら。帰りの新幹線の中で読む本を探そうと思い、hakapyonも古本の棚を覗きます。
本日のお宿である「東京ステーションホテル」のことが詳しく書かれている「東京駅」という本が面白くて、つい読みふけってしまいました。かなり昔の本です。写真付きで500円。なになに、「昔から外国人の間では、東京のホテルといえば帝国ホテルか東京ステーションホテルが良いと評判であった」
なるほど、それであんなにフロントに外人さんがいた訳やね。この本が書かれた時代には、まだそんなにはホテル数が多くなかったという前提を踏まえても、やはりステーションホテルは名門だったのか・・・。

ハードカバーだったのでかさばると思い、購入しなかったのですが、今思うとなかなか面白い本だったので買っておけばよかったです。
本だけでなく、映画のパンフレットもありました。「アラビアのロレンス」のパンフレットが3,000円で販売されていました。

新橋駅から西新橋方面に向かいます。めざすは西新橋のドトールです。
このドトールは、ドラマ「ピュア」で優香ちゃんと徹さんがデート中に珈琲を飲んでいた喫茶店なのです。今日はこれから沢渡徹役を演じた堤真一さんの舞台を見に行くということで、表敬訪問と称してそのロケ現場に行ってみようと思っていました。

しかし、方向音痴のhakapyonは西新宿の真中で迷子になってしまいました。西も東もわからない有様です。わからないままにぶらぶらと歩いていると、道の片隅に石碑が建っているのを見つけました。「何かいわれの有る場所なのかな?」と思い、覗いてみると「浅野内匠頭 終焉の地」と書いてあるではありませんか。あ、浅野内匠頭ですって?時代劇ドラマ「1/47」でこれから見に行く堤真一さんが演じていた方ではないですか!しかも丁度2日前にhakapyonはこの「1/47」をレンタルして見ているのです。

木村拓哉さん主演のこのドラマは、放映当時も見ていました。(出演陣も豪華でした・・・佐藤浩市さん、松雪泰子さん、深津絵里さん、松たか子さん、小林聡美さん、大杉蓮さん、妻夫木聡さん、岡田准一さん、渡辺謙さん!・・・こうやって連ねると、hakapyonの好きな俳優さんばかりです。)そして実は、このドラマの中で一番印象に残っていたのが、堤さん演じる内匠頭の切腹シーンだったのです。
場面の詳細は覚えていなかったのですが、このドラマを見た時に、堤真一さんっていい役者さんだな~と改めて思った記憶があるのです。眼の表情とか、通る声とか。役者としての堤さんを再発見したドラマ、ともいえます。堤さんについてはその頃は今ほどに好きでもなくて、でも若いときから「この人はきっといい役者さんになるだろうなあ」と注目していた方でした。(サクセスのCMとか、キリンラガーのCMとか出ていましたよね。線が細くて綺麗な顔をした「正統派」の役者さんだな、と思っていました。今でいう、竹之内豊さんのようなイメージで捕らえていました)

「1/47」は、堤さんの舞台を見る前にもう一度見てみようかなとふと思い、たまたまレンタルしたのです。二度目だというのに、やはり切腹のシーンは胸に来るものがありました。白の死装束に身を包んだ内匠頭が、桜散る中、無念さを眼に湛えて腹を切るシーンを見ながら「うんうん、こんな感じだったよな~、ここ泣けるよな~」とひとり感動の再確認をしていたhakapyonです。
その切腹が、この場所で行われたというのです。・・・すごい偶然。も、もしや今日は堤真一デーなのかしら?(笑)
石碑の横には内匠頭の辞世の句も書かれていました。
「風さそう 花よりもなお我はまた 春のなごりをいかにとかせん」


<指切りドトールでティーブレイク@「ピュア」>

浅野のお殿様ご臨終の地を離れ、迷いながらもなんとか目的地である西新橋のドトールにたどり着きました。おお!詳細は違っているけれど、ドラマのとおりの外見です!
店内はランチを取るサラリーマンで一杯です。hakapyonも早速中に入って珈琲とベーグルサンドを注文しました。
優香と徹さんが使用したと思われる、ウインドウ沿いの丸テーブルの席に腰を下ろし、昼食をすませ、手帳の整理やスケジュールの確認をしました。すぐ横は大きなガラス張りの窓。この日は天候も良く、窓は大きく開かれ、外から気持ちいい風が入ってきます。優香(和久井映見)と徹(堤真一)の「指切りシーン」がここで撮影されたのかと思うと、感無量です。

この「ピュア」というドラマは、放映当時は見ていませんでした。この頃は、「月9」というジャンルに興味が無かったのです。(もともとドラマは見ないほうですし、特に月9のドラマはほとんど見ていませんでした。)でもhakapyonの周りでは絶大な人気がありました。会社の同僚とカラオケに行き、男性陣の一人がミスチルの「名も無き詩」を歌った時のことです。hakapyonはここで初めてこの歌を聴き、なんていい歌なんだ!と感激しました。すると一緒にいた同僚の女性陣が「これ「ピュア」の主題歌ですよね~!」「「ピュア」見てるの?」「見てます~!徹さんカッコイイですよね~!」と盛り上がり始めたのです。意地でも月9を見ていなかったhakapyonは輪の中に入れず、「・・・徹さんって、誰??」と一人頭に??マークが突き刺さっていました。

その後も「ピュア」は見ませんでしたが、「名も無き詩」は相変わらず大好きでした。数あるミスチルの詩の中で、一番のお気に入りでした。でも、歌詞の中でどうしてもわからない箇所があったのです。冒頭の♪「ちょっとくらいの汚れ物ならば 残さずに全部食べてやる」という歌詞です。汚れ物を食べる・・・??何かの比喩だとは思っていましたが、一体何を意味するのかわからないまま月日が過ぎました。

そして、レンタルビデオで「ピュア」を見て初めて、この歌詞の謎が解けたのです。「本当のこと」を追い求め、言い訳ひとつせず、優香のために世の中のダーティな部分を一身に背負っていた沢渡徹さん。この「名も無き詩」というのは徹さんの詩だったのか・・・。愕然としました。他にも歌詞を追うとドラマとリンクする部分が多く、感銘をうけます。
優香が作った作品を、パーティ会場で披露するシーンがあります。
徹さんをモチーフにしたその作品のタイトルについて、「無いんだったら言わなくていい」と言った徹さん。そして「この作品のタイトルは、愛です。」という優香。ここに「名も無き詩」が流れるのです。これはもう反則技ですよね・・・。

<地下鉄「霞ヶ関駅」経由~日比谷シャンテへ@「ビギナー」>

ドトールを出て、仕事用の写真撮影のために日比谷シャンテへ向かいました。
地下鉄で移動しようかと思っていたのですが、地図を見ると結構近いことがわかり、徒歩で行くことにしました。霞ヶ関の官庁街を抜け、日比谷公園に向けて歩きます。国家の中枢らしい、整然とした街並みです。
すると、あれ?どこかで見たことのある風景・・・霞ヶ関・・・?そして横には地下鉄「霞ヶ関駅」が。あ!ここはドラマ「ビギナー」であんぱん裁判を傍聴していた桐原さん(堤真一)を森野さん(松雪泰子)が待っていた駅じゃないの?(この時は記憶があいまいだったのですが.、家に帰ってビデオで確認したら確かにこの場所でした)またまた偶然にも堤さんに関連する場所に来てしまった訳です。都心はドラマのロケ地が多いとはいえ・・・これはさすがに驚きました。
うん、これは偶然なんかじゃない!必然だ!今日は堤真一デーなのだ!
俄然、夜の観劇に向けてテンションが上がってきました。


<「芝居」というものを見る@「ダム・ウェイター」>

浜松町で友人と合流し、三軒茶屋へ向かいます。
三軒茶屋駅の構内に「ダム・ウェイター」のポスターが貼ってありました。堤真一さんと村上淳さんが黒いスーツを着て、銃を構えています。あと何時間か後には、この二人に会えるのです。ああ、楽しみ♪♪
「シアタートラム」は三軒茶屋駅のすぐ近くにありました。キャパ200くらいの小さな劇場です。思っていたより狭い空間で、まるで大学の教室のようでした。hakapyomと友人の席はG-16番と17番。上手側(舞台に向かって右側)、前から6番目です!座ってみると、舞台が近い!この前見た「カメレオンズ・リップ」はシアターコクーン2階の最高尾でしたから・・・飛躍的な前進です。

一列前の斜めの席に、段田安則さんが奥様といらっしゃいました。段田さんは堤さんの事務所の先輩であり、ドラマ「GOODLUCK!」で共演もなさっています。劇作家・野田秀樹さんが東大時代に立ち上げた伝説の劇団「夢の遊眠社」の看板役者でもありました。同じくNODA・MAPの常連役者である堤さんの舞台をどのようにご覧になるのでしょうか。

「ダム・ウェイター」Bバージョンを演じる浅野さんと高橋さんの愉快な前説アナウンスとともに、本日の演目「ダム・ウェイター」(Aバージョン)が始まりました。

ある雑居ビルの地下室。あるのはベットが二つとダム・ウェイター(料理昇降機)。
殺し屋のベンとガスはここで何時来るかとも解らない殺人の仕事の依頼を待っています。
上手に村上淳さん扮するガス。下手に堤真一さん扮するベン。ガスは他愛も無いことを喋りつづけ、体を動かしています。対するベンは身動き一つせず、ベットに寝転んで新聞を読んでいます。時々ガスの問いかけに相槌を打ち、残酷な事件を伝える新聞記事を読みあげます。表情は顔の前に見開かれた新聞で見えません。この構図がかなり長い間続きます。

何分か過ぎた頃に、突然ベンが新聞をさばくバサッ!という音とともに動きはじめます。(堤さんの舞台でのキレのいい動きは相変わらずです)
ベンはその後も、たびたび新聞を開いたり畳んだりします。ばさっ、ばさっ、ばさっ!この音が、台詞以外は無音の舞台のアクセントになっています。二人はさらに他愛も無い会話を続けます。サッカーチームのホームアンドアウェーについてとか、お茶を沸かす時には、「やかんに火をつける」のか、「やかんを火にかける」のか。そんなあまり意味の無い会話を続けながらも、ガスは不安を感じ始めています。自分の仕事に疑問をもち始めています。対するベンはそんなガスに対してでしょうか、何故かイラついているようです。几帳面そうなベンはルーズなガスを諌めます。でもガスは取り合いません。そのうちに、彼ら二人のもとに謎のメッセージが舞い込んできます。戸惑うベンとガス。そして今度はダム・ウェイターが降りてきて、二人に料理の注文が舞い込んでくるのですが・・・。

舞台を見るたびに、役者さんって一種のアスリートだなと思います。
頭、表情、動作、声・・・。全身を使っての感情表現。
堤さんの声がよく通るのに驚きました。低い声なのに台詞が明瞭です。台詞を効果的に観客に届かせるための「間」を心得えているのでしょう。そう、堤さんは「間」がいいですよね。タメが長い。動作の切れも良く、見ていてとても気持ちがイイです。特にダム・ウェイターの前で上品にお辞儀をする姿がエレガント、なおかつコミカルで可愛らしかったです。あ、あとベットでのはちゃめちゃな暴れ方(笑)!一体どうやったらあんなユーモラスな動きができるんでしょう???

村上さんはガスの不安を挙動不審さで表現していました。ちぐはぐな動き、不安感を煽る台詞回し。ガスの不安がこちらまで伝わってきます。ベンに対する甘えたようなしぐさも可愛かった。保護欲をそそります。それになんといっても村上さんはスタイルがイイ!奇跡のような顔の小ささです(笑)。

イケメンなおかつイケスタイルのアスリート二人の芝居は、笑いあり、不条理あり、切なさありの様々な展開を経て、二人に対して情が沸いてきた頃に残酷な結末を迎えます。

今日のターゲットは自分だ!自分は消される!と気付いたガスはもがきます。ベンに救いを求めます。でもベンにはどうすることもできません。ベンも苦しみながらも、運命に従うしかないのです。地下室で指令を待つだけの「ウェイター」の二人には、もともと自由なんて無いのです。
最後はガスの不安が的中し、(おそらく逃げ出そうとして)血まみれになったガスにベンの銃口が向けられました。
ガスの無念そうに崩れ落ちる様と、ベンのやりきれない表情を残して、幕は下りました。

素晴らしい舞台でした。「芝居」を観た、という感じです。
徐々に変化する二人の心情の変化が痛いくらいに伝わってきました。
舞台に二人きりなので、それぞれの役者の持ち味がいかんなく発揮されており、それが作品をいい意味で支配していました。自然と二人のやりとりに引き込まれていきました。
この濃密な空間に自分が立ち会えたことをうれしく思いました。
あっという間の一時間でした。

拍手がなりやまず、カーテンコールです。二人が再登場しました。演じた役者さんに直接拍手を送れる、これがナマの醍醐味だと思います。開放感に浸るリラックスした村上さんに対して、真顔のままの堤さんの対比が面白かったです。hakapyonが見る「ダム・ウェイター」は今日限りですが、彼らは明日も明後日もベンとガスで在りつづけるのです。

シアターからの退場の際、hakapyonの前に段田安則さんが立たれました。目の前に段田さんのうなじが見えます・・・(笑)芸能人をこんなに真近で見たのは初めてです。奥様と、「楽屋に寄ってく?」なんて内容の話をされていました。一緒に見ていた友人によると、hakapyonの横に市川実和子さん(「GOODLUCK!」で柴咲コウのお姉さん役を演じていた女優さんです)もいらっしゃったのだそうです。残念ながらhakapyonは気がつきませんでした。

舞台の感想を友人と語りながら、汐留まで向かい、友人オススメの店で今日の打ち上げをしました。カクテルやワインが入り、そこから先はもう女二人のお祭り状態です!
何を語ったのかはココではオフレコということで・・・(笑)

ステーションホテルにたどり着いたのは深夜近くでした。
廊下から、東京駅丸の内口のコンコースが見えます。まだ人が右往左往しています。
部屋に入ると、まずキングサイズのベットが眼に入りました。パステルグリーンを基調とした、天井の高い、落ち着いたお部屋でした。ベットに寝転んで眼を閉じると、先ほどの舞台の様子が脳内リプレイされました。ベンのうやうやしいお辞儀、可愛かったなあ。ガスのリアクション、不自然すぎて面白かったなあ。カーテンコールの堤さん、あいかわらず愛想なかったなあ。でも何故かあの表情が一番印象に残ってるんだよね・・・。うとうとうと。

遠くから駅構内のアナウンスが聞こえてきました。
東京駅はまだ眠りません。

hakapyonは先に眠ります・・・。お休みなさい。


                       (2へ続く)


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